騎手に迫る耐えてチャンスをつかんだ苦労人

あきらめずに頑張れば、その先には素晴らしいものが待っている

柴田 大知 騎手Daichi Shibata

1977年生まれ。競馬学校を第12期生として卒業後、1996年にデビュー。柴田未崎は双子の弟で、JRA史上初の双子騎手誕生と話題を集めた。1年目に27勝を挙げ関東新人騎手賞を受賞。2年目にはエアガッツのラジオたんぱ賞(1997年)で重賞初勝利を飾るも、以降は勝ち星が減り、2006年から2008年は平地勝利ゼロに。しかし、この間、障害レースにも積極的に騎乗した結果、2011年には中山グランドジャンプ(マイネルネオス)を含む9年ぶりの2ケタ勝利(20勝)をあげると、その後はコンスタントに勝ち星を重ねている。2013年のNHKマイルカップ(マイネルホウオウ)で平地GI 初制覇を果たし、グレード制導入以降では史上2人目となる平地・障害の両GI 制覇を達成。

  • なかなか成績が上がらず必死だった競馬学校時代

    騎手をめざすきっかけは、同じ場所で乗馬を習っていた先輩で4年上の小林淳一さん(現在は競馬学校教官)が競馬学校に合格したことです。僕と弟も、そうか、騎手という道があるのか、僕らもなれるかもしれないなと意識するようになり、それからは乗馬もより一生懸命習うようになりましたね。

    ただ、競馬学校に2人とも合格するのは難しいかもしれないと思っていました。未崎の方が乗馬に限らず昔から何でも上手でしたし、落ちるなら僕かな、と。だから2人そろって合格の知らせがきたときには大喜びしました。

    競馬学校では、僕は成績がいつも真ん中くらいで、毎日必死だった3年間という感じです。特に自分は体力面が課題で、ランニングや筋トレ、木馬でのトレーニングなど、とにかく毎日頑張っていましたね。三年の後半は少しずつ成績も上がっていきました。

  • 10年ほど続いた不遇の時期

    デビューした年にたくさん勝つことができ、2年目で重賞を勝てたりしたのは、所属厩舎の栗田博憲調教師が多方面でのバックアップをしてくださったお陰だと思っています。感謝してもしきれないです。

    ただ、その後フリーになったこともあり、徐々に成績を落として騎乗数も減っていきました。この間は、自分に何が足りないのか、どうしたらもっと乗せてもらえるのかということばかり考えていました。技術を磨こうにも、レースになかなか乗れないので、ひたすら木馬でのトレーニングを続けたり、調教だけでもたくさん乗せてもらって、できるだけ馬に接する時間を長くとる様にしていまいた。10年くらいはそういう時期が続き、この間は本当に苦しかったです。

    心の支えは、やっぱり家族ですね。毎日、精神的にもきつかったですが、それでも家に帰れば嫌なことを忘れられ、元気になれましたから。僕がくさらずに頑張れたのは、家族のおかげでもあります。

  • あきらめずにやってきたことが実り障害レースでGI 制覇

    成績が上向いたきっかけは、2008年の夏に騎乗したダイイチミラクルという馬でした。オープンクラスのハンデ戦で、49キロという軽い負担重量で乗れる騎手がいない、という話を聞いて自分からお願いしに行きました。体重も頑張って落としましたね。メインレースに乗れるなんて、本当にめったにないチャンスでしたから。結果は2着でしたが、自分としても上手く乗れましたし、8番人気と人気がなかったこともあって関係者の皆さんに喜んで頂けたことは、ものすごくうれしかったです。

    こういうことが積み重なって、自信になり、少しずついろいろな馬に乗せて頂けるようになっていきました。それが2011年にJ・GI の中山グランドジャンプをマイネルネオスで勝てたことにつながったんだと思います。あれは本当に大きかったです。勝利騎手インタビューでも、思わず感極まってしまいました。

    じつは障害のレースにはデビューから10年くらい乗っていませんでした。でも平地では乗り馬がいないし何かしなきゃと思い、2005年から乗り始めたんです。最初はトレセンの乗馬苑に毎週通い、教官に基礎を教えていただきました。それから競走馬で練習。あらためて、あきらめずにやっていればチャンスはどこかにあるんだなと思わされました。そのチャンスが障害のレースになるなんて、自分でも想像すらしていませんでしたが。

  • 頑張って乗り越えれば、頑張った以上のものが返ってくる

    最初の所属の栗田博憲先生には、実習生の頃から言われていたことがあります。それは、“何をするにも、なんとなくやっていたのではダメだ”ということです。生活態度はもちろんですが、馬に乗ることも同じ。なんとなく乗っているだけじゃダメで、調教からきちんと乗っているからこそ競馬で結果が出せるのです。

    その教えの通り、苦しかった時期は短くなかったですが、そこできちんと頑張れたからこそ今の自分があるのだと思います。あの時期があったおかげで、いろいろ学べましたし、感謝する気持ちも我慢することも身に付きました。

    これから騎手になろうという方も、夢に向かって進む中で、思うようにはいかないことも出てくると思います。でも頑張ってそれを乗り越えられた時には、それ以上のものが自分に返ってきます。諦めずに頑張れば、その先には素晴らしいものが待っている。それが騎手という仕事だと思います。

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