驚かされたのが前走の東京ハイジャンプ（J・GⅡ）だ。脚部不安で4月以来の実戦。加えてジューンベロシティ（4着）、イロゴトシ（6着）などの実力馬がそろっていたなかで、終始スムーズな競馬を見せた。余裕十分の手応えで直線に入ると、最後は障害重賞3勝のホッコーメヴィウスに2馬身1/2差をつけて完勝した。引き続きコンビを組む石神深一騎手は「（前走は）初騎乗でしたし、休養明けということもあって半信半疑だったのですが、本当に強かったですね。競馬に行ってスイッチが入るタイプのようです。その前回より調教の過程がいいですし、間違いなく状態は上向いています。中山にも実績がありますからね。チャンスでしょう」と、期待十分に語っていた。

あらためて能力の高さを感じさせたのが、重賞2勝目となった前々走の阪神ジャンプS（J・GⅢ・芝3140メートル）だ。前半は離れた3番手で泰然自若の構え。逃げるホッコーメヴィウス（2着）との距離を少しずつ詰め、直線は一騎打ちの様相から最終障害飛越後に先頭へ。ゴール前は流す余裕を見せての快勝だった。前走の東京ハイジャンプ（J・GⅡ・芝3110メートル）は、スローペースに加えて、馬群が密集して動くに動けない展開。力を出し切れずの4着だったが、それでも追い上げた際には前をのみ込むかという勢いがあり、脚力は示した。春からさらに力をつけて臨む大一番。今度は好勝負になりそうだ。

障害デビューは2020年の5月。休養を挟みながら着実に力をつけ、今年前半は1着、2着、3着、1着。着差こそ大きかったが、中山グランドジャンプではJ・GⅠ初挑戦ながら3着に入った。続く京都ハイジャンプ（J・GⅡ）で接戦を制して重賞制覇を果たすなど、春は素質開花を印象づける活躍を見せたが、秋は8着、4着。やや物足りない印象もあるが、前々走は休養明け、また秋2戦ともに本馬にとっては距離不足だった。前記中山グランドジャンプ3着が示すように、持久力勝負こそが得意とするところ。タフな大障害コースに替わって大きく飛躍する可能性を秘めている。実際、中山グランドジャンプの1、2着馬が不在。戴冠の絶好機が訪れた。

昨年の本レース優勝は、J・GⅠ初挑戦どころか、中山の障害コース自体が未経験でのもの。しかも当時が障害4戦目だった。センスと力は疑いようがないが、今年は3着、9着、11着と苦戦中。前走に続くコンビ結成となる五十嵐雄祐騎手は「難しい面があるのは以前と同様ですが、最近は悪い意味で障害戦に慣れてしまっているところがありますね。平地の時も真面目に走らないところがあったようですが、ここ2戦は重馬場で、余計にそういう面が出てしまった印象があります。中間の雰囲気は悪くありませんし、昨年勝っていますからね。良馬場なら変わっていいでしょう」と、連覇を狙う舞台での変わり身に期待を寄せていた。

障害転向2戦目で初勝利。オープンクラス昇級初戦も連勝して迎えた前々走の阪神ジャンプS（J・GⅢ・芝3140メートル）こそ10着と敗れたが、前走の京都ジャンプS（J・GⅢ）では見事な変わり身を見せて優勝した。ゴール後に鞍上を振り落とすなど荒削りな面が目立つが、それだけ伸びしろも大きい印象だ。主戦の草野太郎騎手は「とにかく難しい馬ではありますが、それだけに気を抜く暇がない大障害コースはかえっていいのでは、とプラスに捉えています。障害をなめて飛ぶようなところがありますが、集中しているときはいい飛越をしてくれます。状態は変わらず良好ですし、J・GⅠでもやれていいだけの力があります」と、力強く語っていた。

オープン特別・ペガサスジャンプSを連覇している実力馬。昨年は、前年の中山大障害2着馬ブラゾンダムールを退けて優勝。今年はダイシンクローバー以下を完封しての勝利だった。肝心のJ・GⅠでは5着、5着、5着、7着だが、前走では平地で勝ち星を挙げるなど、これまで以上に力をつけている印象だ。2戦ぶりの騎乗となる大江原圭騎手は「馬体としてはようやく完成形になったのかなと感じています。63キログラムの斤量の影響があるのか、J・GⅠではもうひとつ頑張れていませんが、今回はレース間隔を空けて臨みますから、そのあたりがいいほうに出てほしいですね」と、期待のほどを語った。

障害22戦目にして初勝利を挙げ、オープンクラス初勝利はそこから21戦目という頑張り屋。陣営のたゆまぬ努力と、それに応えてキャリアを積んできた本馬にまず敬意を表したいところだ。一方で、年齢を経てからのほうが成績も良く、一昨年には特別でオープンクラス2勝目を挙げ、今夏は重賞でも好走。主戦の小野寺祐太騎手は「63キログラムの斤量は経験済みですし、中山も得意です。11歳間近ですが、いまだに調教で引っ掛かるくらい気持ちの強い馬なので、初めての大障害コースでもしっかり走ってくれると思っています。力を出し切って上位を狙いたいですね」と、意気込んでいる。