阪神競馬場に場所を移した2014年以降の朝日杯フューチュリティSを振り返ると、2018年優勝のアドマイヤマーズは3歳時にNHKマイルC、香港マイルと国内外のGⅠタイトルを獲得。2021年は優勝馬のドウデュースが翌春の日本ダービーを制したほか、2着セリフォス、3着ダノンスコーピオン、5着ジオグリフも翌年にGⅠ制覇を果たすなど、出走馬のその後の活躍は枚挙にいとまがない。その名(Futurity)のとおり将来有望な2歳馬によって争われる一戦には、どのような傾向があるのだろうか。阪神競馬場で行われた過去9回のデータから探ってみた。
2016年は単勝3番人気以内に支持された馬がそろって4着以下に敗れる波乱となったが、1番人気馬はこの年を除く過去9回中8回で馬券に絡んでいる。その8回では、2番人気馬と3番人気馬のうち少なくとも1頭は3着以内に入っていたので、上位人気馬の信頼度は高いとみてよさそうだ。ただし、3着以内馬のうち1頭が7番人気以下だったケースが8回のうち5回あったので、下位人気馬も買い目に加えておく必要がありそうだ。〔表1〕
単勝人気 | 成績 | 勝率 | 連対率 | 3着内率 |
---|---|---|---|---|
1番人気 | 4-2-2-1 | 44.4% | 66.7% | 88.9% |
2番人気 | 2-3-1-3 | 22.2% | 55.6% | 66.7% |
3番人気 | 1-1-2-5 | 11.1% | 22.2% | 44.4% |
4番人気 | 0-0-1-8 | 0% | 0% | 11.1% |
5番人気 | 0-0-0-9 | 0% | 0% | 0% |
6〜9番人気 | 2-2-0-32 | 5.6% | 11.1% | 11.1% |
10番人気以下 | 0-1-3-62 | 0% | 1.5% | 6.1% |
過去9年の前走別成績を調べると、前走がデイリー杯2歳Sだった馬が7頭、サウジアラビアロイヤルCだった馬も6頭が3着以内に入っており、芝1600メートルの重賞から臨んだ馬の好走が多いことがわかる。〔表2〕
前走 | 成績 | 勝率 | 連対率 | 3着内率 |
---|---|---|---|---|
サウジアラビアRC | 3-2-1-5 | 27.3% | 45.5% | 54.5% |
デイリー杯2歳S | 1-4-2-17 | 4.2% | 20.8% | 29.2% |
京王杯2歳S | 0-2-2-21 | 0% | 8.0% | 16.0% |
その他のJRA重賞 | 0-1-1-14 | 0% | 6.3% | 12.5% |
オープン特別 | 1-0-1-18 | 5.0% | 5.0% | 10.0% |
1勝クラス | 2-0-0-27 | 6.9% | 6.9% | 6.9% |
新馬 | 1-0-1-3 | 20.0% | 20.0% | 40.0% |
未勝利 | 1-0-1-12 | 7.1% | 7.1% | 14.3% |
地方のレース | 0-0-0-3 | 0% | 0% | 0% |
なお、1勝クラスからの臨戦で優勝した2014年のダノンプラチナと2016年のサトノアレスは、共に前走が中2週のベゴニア賞とレース間隔が詰まっていた。しかし、2017年以降は前走との間隔が中3週以下だった馬が優勝したことはなく、3着内率も7.1%にとどまっている。〔表3〕
前走との間隔 | 成績 | 勝率 | 連対率 | 3着内率 |
---|---|---|---|---|
中3週以下 | 0-1-1-26 | 0% | 3.6% | 7.1% |
中4週以上 | 6-5-5-51 | 9.0% | 16.4% | 23.9% |
過去9年の優勝馬はいずれも前走を勝っての参戦で、〔表2〕で挙げたサウジアラビアロイヤルC、またはデイリー杯2歳Sを勝って臨んだ馬は〔4・3・2・3〕(3着内率75.0%)と3着内率も高いレベルにある。逆に、前走がこのどちらかのレースで2着以下だった馬は〔0・3・1・19〕(3着内率17.4%)といまひとつ。前走で負けていた馬は評価を下げた方がいいだろう。〔表4〕
前走の着順 | 成績 | 勝率 | 連対率 | 3着内率 |
---|---|---|---|---|
1着 | 9-5-7-58 | 11.4% | 17.7% | 26.6% |
2着以下 | 0-4-2-62 | 0% | 5.9% | 8.8% |
過去9年の通算出走回数別成績を見ていくと、出走回数が増えるにつれて好走率が下がっていくのだが、キャリア4戦の馬は単勝6番人気以下に限っても〔1・1・2・22〕と、3着内率(15.4%)がたいして下がらないのが面白いところ。しかも、2014年2着のアルマワイオリ、2015年3着のシャドウアプローチ、2016年3着のボンセルヴィーソは単勝2桁人気での好走と、妙味も大きい。〔表5〕
通算出走回数 | 成績 | 勝率 | 連対率 | 3着内率 |
---|---|---|---|---|
1戦 | 1-0-1-3 | 20.0% | 20.0% | 40.0% |
2戦 | 4-4-3-32 | 9.3% | 18.6% | 25.6% |
3戦 | 3-4-1-34 | 7.1% | 16.7% | 19.0% |
4戦 | 1-1-4-28 | 2.9% | 5.9% | 17.6% |
5戦以上 | 0-0-0-23 | 0% | 0% | 0% |
前走で敗れていた馬や、通算出走回数が5戦以上だった馬の優勝例がないことはここまでに述べてきたが、過去9年の優勝馬は1400メートル未満のレースに出走経験がなかった点、5着以下に敗れた経験がなかったという点でも共通している。さらに、前走での単勝人気が2番人気以内だった点も共通していることを加味すれば、優勝候補は絞れてくるだろう。〔表6〕
(高那実 マヤ)
注記:表は横にスクロールすることができます。
年度 | 優勝馬 | 最短距離 | 最低着順 | 前走の単勝人気 |
---|---|---|---|---|
2014年 | ダノンプラチナ | 1500m | 2着 | 1番人気 |
2015年 | リオンディーズ | 2000m | 1着 | 1番人気 |
2016年 | サトノアレス | 1600m | 2着 | 2番人気 |
2017年 | ダノンプレミアム | 1600m | 1着 | 2番人気 |
2018年 | アドマイヤマーズ | 1600m | 1着 | 1番人気 |
2019年 | サリオス | 1600m | 1着 | 1番人気 |
2020年 | グレナディアガーズ | 1400m | 4着 | 1番人気 |
2021年 | ドウデュース | 1800m | 1着 | 2番人気 |
2022年 | ドルチェモア | 1500m | 1着 | 2番人気 |
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