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現地時間9日、香港シャティン競馬場で行われた4つの国際レース。その先陣を切って第4レースとして行われたのが香港ヴァーズ(G1・香港。芝2400メートル)だ。
朝から曇天で気温は16度。肌寒い気候の下、このレースに参戦したのは14頭。右前脚の不安により装鞍所で馬体検査を課せられたラトローブ(牡3歳)もなんとかそれをパスし、出走に漕ぎつけた。 14頭の内訳は地元香港馬とイギリスからの遠征馬がそれぞれ4頭、アイルランド調教馬が3頭、日本調教馬が2頭、そしてフランスからの遠征馬が1頭と、国際色豊かな1戦となった。
日本馬2頭はクロコスミア(牝5歳、栗東・西浦 勝一 厩舎)、とリスグラシュー(牝4歳、栗東・矢作 芳人 厩舎)。いずれも前走はエリザベス女王杯(GⅠ)を走っており、前者が2着、後者が1着だった。レース2日前の金曜日に発表された馬体重ではリスグラシューは前走比マイナス6キログラムの456キログラムに対しクロコスミアが同マイナス11キログラムの425キログラム。前者はベストターンドアウト賞にも選出され、見栄えがしたが、後者は火曜日の朝に最終追い切りを行った後はずっと馬場入りせず厩舎まわりの曳き運動だけだったにも関わらず体を減らしており、少々心配された。
このレースの馬場状態はGood(良)。ゲートが開くと大外枠のプリンスオブアランが外へヨレるようにスタート。対照的に最内枠から出たクロコスミアは岩田康誠騎手にいざなわれスンナリとハナを奪った。
最初の400メートルが25秒09。緩い流れに持ち込んだクロコスミアの直後では、エグザルタントの鞍上のZ.パートン騎手が何度も後ろを振り向きつつ「何も行かないなら……」という感じで2番手に収まる。
その後ろにリヴンと、久しぶりにアガ・カーン殿下の勝負服に身を包んだC.ルメール騎手が操るエジーラが並び、5番手がパキスタンスター。さらにサルウィン、レッドヴァードンが並んで続き、その後ろのインにヴァルトガイスト。さらにその直後の外にラトローブ、内にロストロポーヴィチというオーストラリア経由のジョセフ&エイダン・オブライエン厩舎勢。少し間が開いてそこからは縦長に4頭。イーグルウェイ、リスグラシュー、ミラージュダンサー、そしてスタートでフラついたプリンスオブアランが最後方からの追走となった。
向正面に入っても隊列に大きな変化はない。ただ、マイルの通過タイムが1分39秒01のスローペースということもあり、3コーナーでは馬群がほぼ一団。先頭のクロコスミアからシンガリのプリンスオブアランまでが約1秒少々の中に収まった。
4コーナーでは逃げるクロコスミアの手応えが怪しくなり、外からエグザルタントが持ったままで並びかける。その直後の馬群の中にエジーラ、外から進出してきたのがサルウィンで、さらに外にロストロポーヴィチ。大外をまくるようにリスグラシューも上がってくる。
ラスト400メートルを切ると外のリスグラシューの伸びが良い。残り300メートルで先頭に立ったエグザルタントの外からリスグラシューが差を詰め、その間に入ってエジーラも粘る。クロコスミアは後退した。
ラスト150メートルでは3番手のエジーラを突き放しリスグラシューとエグザルタントが抜け出し、勝敗の行方は2頭に絞られた。その時点でわずかにリスグラシューが先頭に立ったと思われたが、ラスト100メートルでエグザルタントが差し返す。最後はエグザルタントがリスグラシューをクビ差、退けて優勝。エグザルタントから約2馬身3/4差の3着にエジーラが入り、人気のヴァルトガイストは中団のインを追走したが直線では再三、前が壁になり追えなくなるシーン。最後に伸びたものの脚を余す格好で5着に終わった。エグザルタントの勝ち時計は2分26秒56だった。
ゴール前の攻防を制したのはエグザルタント(内)
2013年以来の香港調教馬勝利となった
近年の香港馬の目覚ましい成長ぶりは皆さんご存じの通りだが、こと長距離戦に限っては手薄。それもそのはず同国に2400メートルの重賞は3つしかなく、香港ヴァーズも2013年にドミナントが優勝しているのが唯一の香港馬としての同レース制覇。海外遠征馬の勝利が続いていた。
今年も8頭のヨーロッパ勢と2頭の日本馬を相手に苦戦必至かと思われたが、エグザルタントが下馬評を覆す完勝劇を披露。香港は短距離を中心に力を強化してきた。いわば「選択と集中」で成功してきたのだが、ここにきてその幅は広がり、ついには長距離でも目を覚まそうとしているのかもしれない。来年以降のこのレースでの成績がどうなるか、注目されるところだ。
逆にオーストラリアで好走して来た遠征組はいずれも惨敗に終わった。
エグザルタントは2400メートルのクイーンマザーメモリアルカップ(G3・香港)を制していたが、当時の出走馬のレベルが少々低いと思われたことに加え、同距離のチャンピオンズ&チャターカップ(G1・香港)では2着とはいえパキスタンスターに完敗していたことから人気の盲点となっていたが、前走の香ジョッキークラブカップ(G2・香港)では同じ2着でも「負けてなお強し」という競馬をしていた。また、先述のドミナントでも手綱を取っていたパートン騎手が騎乗したのも大きかった。
「よい位置で流れに乗れた。この距離で勝てたことがうれしい」
パートン騎手は笑顔でそう語った。
2着リスグラシューの矢作調教師は悔しそうな表情を隠そうとせずに言った。 「勝てたと思いました。状態は良かったし、折り合いもついて騎手も完璧に乗ってくれました。以前は東京へ輸送するだけで大変だったことを思えばよく走ってくれています」 なお、クロコスミアは10着だった。
文:平松 さとし
リスグラシュー
クロコスミア
2着 リスグラシュー 矢作 芳人 調教師のコメント
「勝ったと思いました。日本で走った時より細いと思いましたが、海外ではこれが精一杯ですし、落ち着いていたので心配ないと思いました。ジョッキーは上手く乗ってくれたので、我々の力不足です。一度は前に出ているだけに残念です。ここまで頑張ってくれて馬に感謝します。今回で目処がたったので、また海外に挑戦したいと思います」
2着 リスグラシュー J.モレイラ 騎手のコメント
「良く走ってくれました。勝った馬はこの競馬場で走っている。残り600メートルのところで他の馬と接触し、それが最後に影響したと思います」
10着 クロコスミア 西浦 勝一 調教師のコメント
「状態は良かったです。自分のペースで4コーナーまでスローで楽にしていたので、ひょっとしたらと思いましたが、最後は一杯になってしまいました。力は出し切ったので納得の出来るレースです」
10着 クロコスミア 岩田 康誠 騎手のコメント
「早めに後ろから来られましたが、この馬のレースが出来ました」
3着 エジーラ C.ルメール 騎手のコメント
「勝った馬の後ろで理想的な競馬ができました。スタミナがある馬です。少し反応が悪かったですが、最後まで良く頑張りました。リスグラシューはとても素晴らしい馬であることは分かっていましたが、エジーラも良く走ってくれました」
2018年12月9日(日) シャティン競馬場(香港) | ||
4R |
第25回 香港ヴァーズ(G1) |
3歳以上 定量 | 2400m 芝・右 | |||
賞金総額 | : | 20,000,000香港ドル | 発走 14:00 (現地時間) | |
1着賞金 | : | 11,400,000香港ドル | 芝:良 |
着順 | 馬番 (ゲート) |
馬 名 (生産国) | 性 齢 |
負 担 重 量 |
騎手 | タイム ・ 着差 |
馬 体 重 (kg) |
調教師 (調教国) | 単 勝 人 気 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 4 (10) | エグザルタント(IRE) | せん4 | 57.0 | Z.パートン | 2:26.56 | 482 | A.クルーズ(HK) | 6 |
2 | 10 (12) | リスグラシュー(JPN) | 牝4 | 55.5 | J.モレイラ | クビ | 456 | 矢作 芳人(JPN) | 2 |
3 | 12 (08) | エジーラ(IRE) | 牝4 | 55.5 | C.ルメール | 2 3/4 | 449 | D.ウェルド(IRE) | 10 |
4 | 6 (09) | イーグルウェイ(AUS) | せん6 | 57.0 | S.デソウサ | 3 1/2 | 487 | J.ムーア(HK) | 9 |
5 | 1 (04) | ヴァルトガイスト(GB) | 牡4 | 57.0 | P.ブドー | 4 1/2 | 419 | A.ファーブル(FR) | 1 |
6 | 2 (02) | パキスタンスター(GER) | せん5 | 57.0 | W.ビュイック | 4 3/4 | 535 | A.クルーズ(HK) | 3 |
7 | 14 (11) | ロストロポーヴィチ(IRE) | 牡3 | 55.0 | W.ローダン | 7 | 451 | A.オブライエン(IRE) | 12 |
8 | 8 (14) | プリンスオブアラン(GB) | せん5 | 57.0 | M.ウォーカー | 7 1/2 | 453 | C.フェローズ(GB) | 11 |
9 | 3 (05) | サルウィン(IRE) | 牡4 | 57.0 | O.マーフィー | 7 1/2 | 448 | S.カーク(GB) | 5 |
10 | 11 (01) | クロコスミア(JPN) | 牝5 | 55.5 | 岩田 康誠 | 8 3/4 | 425 | 西浦 勝一(JPN) | 8 |
11 | 13 (06) | ラトローブ(IRE) | 牡3 | 55.0 | J.マクドナルド | 9 1/4 | 504 | J.オブライエン(IRE) | 7 |
12 | 9 (07) | リヴン(AUS) | せん5 | 57.0 | H.ボウマン | 15 1/4 | 530 | F.ロー(HK) | 13 |
13 | 7 (03) | レッドヴァードン(USA) | 牡5 | 57.0 | J.ドイル | 22 1/2 | 490 | E.ダンロップ(GB) | 14 |
14 | 5 (13) | ミラージュダンサー(GB) | 牡4 | 57.0 | R.ムーア | 40 3/4 | 493 | M.スタウト(GB) | 4 |
単勝 | 4 | 1,300円 | 6番人気 | 馬連 | 4-10 | 4,110円 | 17番人気 | 馬単 | 4-10 | 9,230円 | 38番人気 |
複勝 |
4 10 12 |
360円 210円 1,000円 |
6番人気 2番人気 10番人気 |
ワイド |
4-10 4-12 10-12 |
1,350円 4,460円 2,650円 |
19番人気 42番人気 31番人気 |
3連複 | 4-10-12 | 34,360円 | 101番人気 |
3連単 | 4-10-12 | 207,950円 | 556番人気 |