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あきれるほどに強いとはこのことを言うのだろう。
ビューティージェネレーション(せん6歳)が昨年に続いて香港マイル(G1・香港)連覇を飾った。圧倒的な1番人気。序盤から徐々に先手を取ると、そのまま一度も並ばれる場面もないまま、直線では後続を3馬身突き放す圧勝だった。
香港での単勝オッズは1.5倍。日本では1.4倍。その支持に違わないレースぶりだったわけだが、陣営は連戦連勝に慢心することなく、最後の最後まで万全の手を尽くしてレース当日を迎えたことで、その走りにつなげたのである。
直線に入ってもビューティージェネレーション(ピンクのメンコ)は余裕の走り
完勝のゴールを駆け抜ける
実は不安も大いにあった。
ひとつは連戦連勝であることだ。日本の感覚からすれば歓迎されそうなことだが、香港のトップホースは、概ねシーズン序盤のレースから全力を出すことはない。トップホースであるほどハンデ戦では60キログラムを超える負担重量を背負わされることになるし、別定戦であればその差は少なくなるものの斤量面でディスアドバンテージを負う。大目標は当然先なのだから、ここで斤量面の不利がありながら全力を出す必要はないのである。ところがビューティージェネレーションは、昨シーズンのチャンピオンズマイル(G1・香港)から4連勝中。とりわけ今シーズンに入ってからは、最初の2戦を60キログラムのトップハンデで走り、前走は負担重量が58キログラムながらもコースのレコードタイムを更新してみせた。その後、4日ほど馬場入りを休んだこともあって、反動が心配されたのもうなずける。
もうひとつは、その前走で見せた、4コーナーからの立ち上がりで外側へ膨れる動きだ。その後もきっちり伸びてゴールを先頭で駆け抜けているだけに、苦しがってのものではない。逆を言えば、外側に行かざるを得ない身体的、あるいは精神的要因があるのだと考えられる。
レースを3日後に控えた木曜日、ビューティージェネレーションはZ.パートン騎手を背に、オールウェザーのレース兼調教コースで追い切られた。動きは上々で、その後に行われた会見でも順調であることが騎乗したパートン、管理するJ.ムーア調教師から異口同音に強調されていた。
ただ実際にその動きを見ると、確かにフットワークは素晴らしく見えたのだが、やはり4コーナーからの立ち上がりで外に膨れるような動きをしていたのも確かだ。そこで翌金曜日、パートン騎手と会話する機会があったので、思い切ってその点を尋ねてみた。すると、「ああ、気付いちゃった?」という表情を見せたあとに続けた。
「痛いとか、そういう類のものではないけど、脚の動きに問題があるのは確か。それでコーナーを終えるところで外に行く感じなんですよ。矯正はできると思うけど、短所を直そうとして走りが小さくなるよりも、長所である良質なスピードの持続力を生かす走り方をしたいので、シリアスな問題とは考えていません。仮に外から早めに並ばれたら窮屈になるかもしれませんが、そんな(並びかけるような)馬、そうそういないでしょう?」
そう、絶対の自信をのぞかせていたが、果たして、冒頭のとおり圧勝を見せた。序盤は、アクセルベタ踏みのような無理な加速はせず、ひとつひとつ丁寧にギアを上げて自身のスピードが自然に上がるのを待ち、加速がついてからは終始先頭に立って、後続を意に介さないような走りを見せた。懸念されていた4コーナーの立ち上がりも、むしろ元から何事もないかのようにスムーズに回り、直線も多少内に刺さる面も見せたが、外に張って行くことなく真っ直ぐに突き抜けた。
「昨日(8日)の朝、ジョン(・ムーア調教師)から、シャティンのオールウェザートラックをキャンターで乗ってくれと頼まれました。前日追い、というわけではないですが、乗った感触から、『もうこれ以上何もする必要がない』と感じました。おかげでよく眠れましたよ(笑)」
そうパートン騎手がおどけ気味に振り返るように、つまり、これが手を尽くしたという点である。と同時に、ここまでの3戦が、決して全力でなかったということも十分に伝わってきた。
さらにパートン騎手は言う。
「これが私たちが見たかったものです。ただただ満足しています。この馬のクルージングスピードはとても快適で、そして圧倒的です」
パートン騎手はこの日、香港ヴァーズ(G1・香港)をエグザルタントで制して、前年の香港カップ(G1・香港)で到達した香港調教馬による香港国際競走グランドスラムの2周目をスタートさせ、香港マイルで早くもふたつ目のスタンプをおした。
ムーア調教師は、かつて管理していた香港最強マイラーのエイブルフレンドとの比較を求められた。 「That’s the most impressive。最も印象的(な勝利)です。これまでどこか懐疑的に見られることもありましたが、これでこの馬がチャンピオンだということに異論はないと思います」
気になるのは、香港で無双となった今、今後のプランについてだ。
「今後は国際的なステージに打って出て行きたいと考えます。全てはオーナーサイドと協議ですが、1月のマイル香スチュワーズカップ(G1・香港)を使って、3月のドバイターフ(G1・UAE)に挑みたいです。見てのとおり、ゴールを過ぎた後も全くスピードが衰えなかったでしょう? 200メートル伸びることに全く不安はないですよ」
奇しくも突き放した2着に破ったのは、昨年のドバイターフの勝ち馬ヴィブロス(牝5歳、栗東・友道 康夫 厩舎)。この馬との比較でも、膨らむのはもはや楽しみばかりだ。
文:土屋 真光
喜びを表現するビューティージェネレーションの関係者
来年は世界でどんな走りを見せるのか
2着 ヴィブロス 友道 康夫 調教師のコメント
「仕上がりは良く、海外が好きなのかドバイと同様に落ち着いていました。久々のマイルで後ろ目のポジションでしたが折り合いはついていました。4コーナーではいけるかなと思いましたが、1着の馬が強かったです。負けはしましたが、この馬なりに頑張ったと思います。応援ありがとうございました」
2着 ヴィブロス W.ビュイック 騎手のコメント
「友道調教師がしっかり馬をつくってくれました。先々週に栗東で乗ったときも良く、今日は素晴らしい競馬をしてくれました。勝った馬が世界一のマイラーだから仕方がないです」
5着 ペルシアンナイト 池江 泰寿 調教師のコメント
「パドックの雰囲気は良かったけれど、馬場入りの時はもう少し気合がのって欲しかったです。ペースが遅かったので勝った馬にこのままやられるなと腹をくくって見ていました。本来ならばトップギアが入るのに、今回は入りませんでした。ペルシアンナイトらしい走りを見せられるように頑張っていきたいです」
5着 ペルシアンナイト M.デムーロ 騎手のコメント
「馬の状態はすごく良い感じでした。ゲートのタイミングは良かったけれど、進んで行きませんでした。3-4コーナーで上がっていったけれど馬場が速すぎて前が止まりませんでした」
7着 モズアスコット 矢作 芳人 調教師のコメント
「反応が悪かったです。ツキも無かったけれど良い時の走りではなかったです。前走が精神的にきついレースだったのでダメージがあったのかも知れません。パドックの感じも良く、フィジカル的に悪いところはありませんでした。ゆっくり休ませて立て直したいです」
7着 モズアスコット C.ルメール 騎手のコメント
「スタートから行き脚がつきませんでした。とても残念です。いつものような末脚も見せられなかったのも理由が分かりません」
ヴィブロス
ペルシアンナイト
モズアスコット
2018年12月9日(日) シャティン競馬場(香港) | ||
7R |
第28回 香港マイル(G1) |
3歳以上 定量 | 1600m 芝・右 | |||
賞金総額 | : | 25,000,000香港ドル | 発走 15:55 (現地時間) | |
1着賞金 | : | 14,250,000香港ドル | 芝:良 |
着順 | 馬番 (ゲート) |
馬 名 (生産国) | 性 齢 |
負 担 重 量 |
騎手 | タイム ・ 着差 |
馬 体 重 (kg) |
調教師 (調教国) | 単 勝 人 気 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 1 (12) | ビューティージェネレーション(NZ) | せん6 | 57.0 | Z.パートン | 1:33.52 | 516 | J.ムーア(HK) | 1 |
2 | 14 (07) | ヴィブロス(JPN) | 牝5 | 55.5 | W.ビュイック | 3 | 436 | 友道 康夫(JPN) | 4 |
3 | 9 (10) | サザンレジェンド(AUS) | せん6 | 57.0 | D.ホワイト | 3 1/4 | 520 | C.ファウンズ(HK) | 8 |
4 | 5 (09) | ビューティーオンリー(IRE) | せん7 | 57.0 | H.ボウマン | 3 3/4 | 519 | A.クルーズ(HK) | 7 |
5 | 2 (14) | ペルシアンナイト(JPN) | 牡4 | 57.0 | M.デムーロ | 4 | 488 | 池江 泰寿(JPN) | 2 |
6 | 11 (11) | ナッシングアイライクモア(AUS) | せん5 | 57.0 | J.モレイラ | 4 1/2 | 522 | J.サイズ(HK) | 9 |
7 | 4 (02) | モズアスコット(USA) | 牡4 | 57.0 | C.ルメール | 5 1/4 | 481 | 矢作 芳人(JPN) | 3 |
8 | 13 (08) | ワンマスター(GB) | 牝4 | 55.5 | R.ムーア | 5 1/4 | 496 | W.ハガス(GB) | 6 |
9 | 8 (06) | シンガポールスリング(SAF) | せん5 | 57.0 | S.デソウサ | 6 1/4 | 495 | A.ミラード(HK) | 5 |
10 | 7 (04) | フィフティーフィフティー(NZ) | せん6 | 57.0 | J.マクドナルド | 7 1/2 | 532 | L.ホー(HK) | 10 |
11 | 6 (05) | ビートザバンク(GB) | せん4 | 57.0 | O.マーフィー | 8 1/4 | 465 | A.ボールディング(GB) | 13 |
12 | 3 (13) | カミンスルー(AUS) | せん5 | 57.0 | M.ウォーカー | 9 1/4 | 469 | C.ウォーラー(AUS) | 14 |
13 | 12 (01) | ホワットエルスバットユー(AUS) | せん6 | 57.0 | K.ティータン | 10 1/4 | 523 | J.サイズ(HK) | 12 |
14 | 10 (03) | インズオブコート(IRE) | 牡4 | 57.0 | M.バルザローナ | 12 1/4 | 505 | A.ファーブル(FR) | 11 |
単勝 | 1 | 140円 | 1番人気 | 馬連 | 1-14 | 1,010円 | 3番人気 | 馬単 | 1-14 | 1,360円 | 6番人気 |
複勝 |
1 14 9 |
110円 230円 370円 |
1番人気 4番人気 8番人気 |
ワイド |
1-14 1-9 9-14 |
420円 540円 3,380円 |
3番人気 7番人気 29番人気 |
3連複 | 1-9-14 | 5,260円 | 19番人気 |
3連単 | 1-14-9 | 12,480円 | 46番人気 |