「短距離王国・香港」が、その強さと層の厚さを再び世界に示した。
中間、脚元に不安の見られていたアメリカのピュアセンセーション(せん5歳)が、レース当日の早朝、一旦は獣医から出走に許可が下りたが、その後出走を取消。
ほとんどの馬が落ち着いて、ゆっくりと馬場に入る香港において、一昨年の香港スプリント優勝馬エアロヴェロシティ(せん8歳)が、いきなりパドックからトロットで姿を現し、スタート地点へとすっ飛んでいった。それから遅れて、残る12頭がゆっくりと、馬場に歩みを進めた。
人気は、日本のビッグアーサー(牡5歳、栗東・藤岡健一厩舎)が単勝オッズ2.6倍の1番人気。以下、上昇株のラッキーバブルズ(せん5歳)、レッドファルクス(牡5歳、美浦・尾関知人厩舎)、エアロヴェロシティが、単勝10倍以下で続いた。
ロケットスタートを切ったのは、昨年の勝ち馬ペニアフォビア(せん5歳)とエアロヴェロシティ。過去2年の勝ち馬がいきなり機先を制した。そのまま、“徹底逃げ宣言”をしていたペニアフォビアが最内から先手を取りきり、エアロヴェロシティは無理に追うことなく控えると、スーパージョッキー(せん8歳)がこれをかわしてペニアフォビアの外へ取りつき、オーストラリアのレベルデイン(牡7歳)が外から、地元のストラスモア(せん5歳)が内からエアロヴェロシティに並んだ。ラッキーバブルズも好スタートを切っていたが、序盤は控え気味に続き、3コーナー手前では内を空け気味の9番手に。アメージングキッズ(せん5歳)は後方2番手につけ、最後方にサインズオブブレッシング(せん5歳)が待機した。
ラッキーバブルズの追撃を抑えてエアロヴェロシティが優勝
この勝利が国際G1・4勝目となったエアロヴェロシティ
3コーナーを過ぎて、ペニアフォビアが2番手のスーパージョッキーと半馬身差を保ちながら軽快に逃げる。一旦は5番手に控えたエアロヴェロシティが、レベルデインを従えながら2頭の直後に接近。さらに大外からビッグアーサーもこの3番手集団に取り付いて4コーナーから最後の直線を迎える。しかし、ビッグアーサーは、「大外の発走で無理なく追走していましたが、4コーナーから伸びる脚がなかったです」と、ムーア騎手が首をかしげたように、この時点でやや劣勢だった。
直線、インをぴったり回ってペニアフォビアがスーパージョッキーを振り切りにかかる。その2頭の外に持ち出して、徐々に接近するのがエアロヴェロシティ。アメージングキッズが内からスルスルと接近。外に持ち出されたラッキーバブルズは、前をめがけて一気に脚を伸ばしてきた。残り150mでエアロヴェロシティが先頭に立ったところへ、ラッキーバブルズが強襲。「だけど、彼(エアロヴェロシティ)は今でも勇敢な戦士でした」とパートン騎手が振り返るように、ラッキーバブルズ(2着)が短アタマ差まで近づいたところからエアロヴェロシティは譲らず、そのままゴールへと飛び込んだ。
「格」の小旗を振るエアロヴェロシティ関係者
オーナーのダニエル・ヤン氏(左)とポール・オサリバン調教師(右)
一昨年に続いての香港スプリント2勝目。8歳馬によるこのレース優勝は史上初めてだ。
オーナーのダニエル・ヤン氏が大きく両拳を上げてウイナーズサークルへと降りてくる。彼の背後には、ピンク地に緑字で「格」と書かれたおなじみのデザインの小旗を持った家族や友人知人が続々と続く。ヤン氏は彼ら一人一人とハイタッチを交わすと、最後にゆっくりと表彰式が行われる芝コースへと歩を進めた。
「感無量です。もう1度この馬でこんな瞬間が訪れるなんて夢のようです」(ヤン氏)
管理するポール・オサリバン調教師も、目にうっすらと涙を浮かべながら笑顔を見せた。
「彼が少し年を取っていたことは否めません。それでも現状の彼にとって最高の状態で臨むことができました。入着は確実だとは思っていましたけど、勝てるとは、最高の結果です」
香港の歴代スプリンターの中でも、サイレントウィットネスやセイクリッドキングダムに並ぶほどの歴史的な名馬の域に達したと言っていいだろう。今後の可能性を問うと、オサリバン師はニッコリと笑って答えた。
「来年1月のセンテナリースプリントカップ(G2、芝1200m)を使って、その後もう1度日本(高松宮記念)に行くことになるでしょう。楽しみにしてください」
ファンの声援に応えるZ.パートン騎手
口取り
表彰式
一方、日本から出走したビッグアーサーは10着、レッドファルクスは12着に敗れた。
文:土屋真光
10着 ビッグアーサー 藤岡 健一 調教師 のコメント
「馬の状態は良かったのですが、アウェイの難しいところが出たのかもしれません。外枠も不利な条件でした。馬場が合わないという感じではありませんでした。応援していただいたファンの皆様には申し訳なく思います。結果を受け止めて、今回の経験を生かして、またチャレンジしたいです」
10着 ビッグアーサー R.ムーア 騎手 のコメント
「道中は馬がワンペースであまり気持ちよく走っていませんでした。初めての舞台の影響があったのかもしれません」
12着 レッドファルクス 尾関 知人 調教師 のコメント
「残念な結果でした。最後の直線でいつもの伸びができませんでした。今回この馬らしい走りがお見せできませんでしたが、また来年頑張ってくれればと思います」
12着 レッドファルクス M.デムーロ 騎手 のコメント
「良いポジションを取れましたが、スペースを確保しようとした内の馬からのプレッシャーを受けました。直線では良い伸びがありませんでした」
ビッグアーサー(R.ムーア騎手)
レッドファルクス(M.デムーロ騎手)
2016年12月11日(日) シャティン競馬場(香港) | ||
5R |
第18回 香港スプリント(G1) |
3歳以上 定量 | 1200m 芝・右 | |||
賞金総額 | : | 18,500,000香港ドル | 発走 14:40 (現地時間) | |
1着賞金 | : | 10,545,000香港ドル | 芝:良 |
着順 | 馬番 (ゲート) |
馬 名 (生産国) | 性 齢 |
負 担 重 量 |
騎手 | タイム ・ 着差 |
馬 体 重 (kg) |
調教師 (調教国) | 単 勝 人 気 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 1 (02) | エアロヴェロシティ(NZ) | せん8 | 57.0 | Z.パートン | 1:08.80 | 540 | P.オサリバン(HK) | 4 |
2 | 2 (05) | ラッキーバブルズ(AUS) | せん5 | 57.0 | B.プレブル | 短アタマ | 488 | K.ルイ(HK) | 2 |
3 | 3 (01) | ペニアフォビア(IRE) | せん5 | 57.0 | S.デソウサ | 3/4 | 520 | A.クルーズ(HK) | 7 |
4 | 5 (07) | アメージングキッズ(NZ) | せん5 | 57.0 | J.モレイラ | 1 1/4 | 522 | J.サイズ(HK) | 5 |
5 | 8 (14) | サインズオブブレッシング(IRE) | せん5 | 57.0 | S.パスキエ | 1 3/4 | 469 | F.ロオー(FR) | 9 |
6 | 12 (06) | テイクダウン(AUS) | せん4 | 57.0 | T.クラーク | 1 3/4 | 618 | G.ムーア(AUS) | 8 |
7 | 4 (04) | ノットリスニントゥーミー(AUS) | せん6 | 57.0 | H.ボウマン | 2 | 522 | J.ムーア(HK) | 6 |
8 | 14 (09) | スーパージョッキー(NZ) | せん8 | 57.0 | K.ティータン | 3 1/2 | 521 | A.ミラード(HK) | 13 |
9 | 10 (03) | ストラスモア(AUS) | せん5 | 57.0 | N.カラン | 3 3/4 | 549 | A.ミラード(HK) | 10 |
10 | 6 (13) | ビッグアーサー(JPN) | 牡5 | 57.0 | R.ムーア | 4 1/4 | 519 | 藤岡 健一(JPN) | 1 |
11 | 7 (08) | レベルデイン(AUS) | 牡7 | 57.0 | B.メルハム | 4 1/2 | 479 | G.ポルテッリ(AUS) | 11 |
12 | 9 (10) | レッドファルクス(JPN) | 牡5 | 57.0 | M.デムーロ | 6 1/4 | 465 | 尾関 知人(JPN) | 3 |
13 | 11 (12) | グラウル(GB) | せん4 | 57.0 | G.リー | 9 1/4 | 485 | R.フェイヒー(GB) | 12 |
取消 | 13 (11) | ピュアセンセーション(USA) | せん5 | 57.0 | C.スミヨン | 546 | C.クレメント(USA) |
単勝 | 1 | 970円 | 4番人気 | 馬連 | 1-2 | 950円 | 4番人気 | 馬単 | 1-2 | 2,850円 | 12番人気 |
複勝 |
1 2 3 |
250円 130円 480円 |
4番人気 1番人気 7番人気 |
ワイド |
1-2 1-3 2-3 |
390円 1,960円 870円 |
4番人気 18番人気 11番人気 |
3連複 | 1-2-3 | 3,240円 | 13番人気 |
3連単 | 1-2-3 | 21,770円 | 85番人気 |
返還馬番 | 13番 |