稍重での開催となった宝塚記念（GⅠ）はサイモンラムセスの逃げで始まった。鳴尾記念を制したストロングタイタンは好位、アメリカジョッキークラブC勝ち馬ダンビュライトは先行勢を見る位置につけたが、1000メートル通過59秒4のラップは速いと踏んだか、他の有力馬は待機策。連覇を狙うサトノクラウンやドバイターフ帰りのヴィブロスは中団、上昇著しいパフォーマプロミス、21年ぶりの外国馬の参戦として注目される香港の年度代表馬（2015-2016年シーズン）ワーザー、昨年の菊花賞馬キセキらは後方という位置取りだ。

1番人気サトノダイヤモンドもスタートではいったん下げたものの、向正面でポジションをみるみる上げていき、4コーナーでは早くも先頭に並びかける勢い。そのため流れが一瞬も緩むことはなく、レースは直線の攻防へと移ったのだった。

ここで力強く抜け出したのがミッキーロケットだ。「馬場が乾いたので内を通ろうと考えた。スタートが上手になってくれたのも心強かった」と鞍上の和田竜二騎手。さらに「勝負どころでついていければ長く脚を使える馬だから」と語った通り、好スタートを切って終始5から7番手のインで脚をためたミッキーロケットは、4コーナーから果敢に進出するロングスパートを見事に決める。まずはサトノダイヤモンドを競り落とし、さすがの末脚で追い込んできたワーザーをクビ差振り切って、堂々の先頭ゴールを果たしたのである。

ミッキーロケットにとっては昨年の日経新春杯以来、実に1年5か月ぶりの勝利が嬉しいGⅠタイトル。また和田騎手も2001年の天皇賞（春）以来、17年ぶりのGⅠ勝利。その時のパートナーは、今春急逝したテイエムオペラオーだ。

「長かった。テイエムオペラオーが後押ししてくれたのだと思う」と、亡き戦友に思いをはせる和田騎手。が、ミッキーロケットの持ち味を十分に引き出す好騎乗がもたらした勝利、とも言えるはずである。

（谷川　善久）