大本命と目されていたダノンプレミアムの回避により、にわかに混迷の気配を増した皐月賞（GⅠ）。人気はワグネリアン、ステルヴィオ、キタノコマンドール、ジャンダルム、オウケンムーンの順、すなわち前哨戦の弥生賞、スプリングS、すみれS、共同通信杯の上位馬が高い評価を得ることとなった。

勝ったのも前哨戦の上位馬。スプリングSで2着に粘ったエポカドーロが、パーフェクトなレースを遂行して最上の結果を手にしたのである。

芝はパワーを要する稍重のコンディション。にもかかわらずアイトーン、ジェネラーレウーノ、ジュンヴァルロが先を争って逃げたことで1000メートル通過59秒2の速いラップが刻まれる。どの位置で流れに乗り、どこから仕掛けて、どこを通るのが有利なのか、予断を許さぬまま馬群は向こう正面、3コーナー、4コーナーと進んでいく。

「行きたい馬がいるようなので、それらを見ながらの競馬」という戸崎圭太騎手の思惑通り、前3頭から大きく離れた4番手の位置で折り合ったのがエポカドーロだ。「返し馬から調子の良さと成長を感じた」という印象のまま、馬場を苦にすることもなく手応え十分に追走。4コーナーからは徐々に差を詰めていきながら、ゆっくりと外へと持ち出される。「馬場が緩いので、いいところを通りたかった」と、これも作戦通りのコース取りで直線へと向かい、エポカドーロは一気に加速態勢へ移る。

パワフルな伸び脚で前の馬たちを交わし、残り100メートルで先頭へ。そこからもストライドの力強さは衰えず、連れて上がってきたサンリヴァルに2馬身差をつける完勝ゴールを、エポカドーロは果たすのだった。

表彰式では、エポカドーロの馬上で指を1本立てた戸崎騎手。それは「まず一冠」の意。オルフェーヴルの初年度産駒の1頭であるエポカドーロが、父と同じ“三冠馬”への挑戦権を獲得したのである。

（谷川　善久）