出走馬18頭中17頭が重賞ウィナー、うちGⅠ馬が7頭。マイルチャンピオンシップ（GⅠ）のゴール前では、ハイレベルなメンバーによる死闘が繰り広げられた。

レース途中から隊列を先導したアエロリットが、前走・毎日王冠に続く逃げ切りを狙って直線へ。直後のアルアインが皐月賞以来の勝利を目指してスパートすると、富士S勝ち馬ロジクライ、NHKマイルC覇者ケイアイノーテックも続き、さらにはヴィクトリアマイル3着のレッドアヴァンセ、昨年の2着馬エアスピネルも迫る。外から脚を伸ばすのはニュージーランドTを差し切っているカツジ、ヴィクトリアマイル1着のジュールポレール、京成杯オータムHを制したミッキーグローリーといった面々だ。

安田記念勝ち馬で1番人気に推されたモズアスコットも前との差を詰めようとするが、どの馬も懸命のラストスパートで突き抜けることを許さない。

そんな大混戦から、最後になって飛び出してきたのがステルヴィオだ。「馬の力を信じて乗った。最高のコンディション。1枠もラッキーだったしスタートも良かった。それが勝因」と振り返るのは鞍上のウィリアム・ビュイック騎手。その言葉通り、スムーズに1番ゲートを出ると先行勢を見る4、5番手の最内で無理なく折り合って、直線では長く力強い末脚を発揮。連覇がかかるペルシアンナイトとともに馬群の内から抜け出すと、この追い比べにアタマ差競り勝って先頭ゴールを果たす。朝日杯フューチュリティS2着、皐月賞4着、日本ダービー8着と、毎レース必ず鋭い追い込みを見せながらも栄冠には届かなかったステルヴィオが、ようやくビッグタイトルを手にした瞬間である。

ビュイック騎手にとってもJRAのGⅠ初制覇。2014年以来4年ぶりの日本競馬参戦だが、この間、ドバイワールドカップなど数々の大レースを勝利し、今年はついに英ダービーも制している。進化を続けるジョッキーの技術が、内枠の利と馬の潜在能力を最大限に引き出してつかんだ、そんな勝利だったともいえるだろう。

（谷川　善久）