エリザベス女王杯（GⅠ）は、昨年2着のクロコスミアが先導、ゆったりとしたペースで流れた。秋華賞3着のカンタービレ、紫苑S圧勝のノームコア、2頭の3歳馬が好位を進み、ここに連覇を目指すモズカッチャンも加わっていく。その内からは、京都大賞典でサトノダイヤモンドに肉薄したレッドジェノヴァも進出。上位人気各馬が凝縮し、互いに様子をうかがいながらのレースとなる。

これらの直後、17頭からなる隊列の真ん中で折り合っていたのがリスグラシューだ。

ここまでGⅠでは2着が4回と、悔しい思いを重ねてきたリスグラシュー。だが手綱を託されたジョアン・モレイラ騎手は「勝てる能力はある。コンディションも上々。いいポジションを取れて追走もスムーズだ」と自信を抱いていたという。

勝負は4コーナーから直線へ。内ラチ沿いに粘るクロコスミアを後続が追おうとするが、なかなか差は詰まらない。ただ1頭、追い込んできたのがリスグラシューだった。

「4コーナーで外にスペースが空いて上手く出せた。そこでもまだ余力があったので、残り300メートルで勝てるんじゃないかと思った」というモレイラ騎手の感触通り、どの馬よりも鮮やかな伸びを見せたリスグラシューは、クロコスミアをクビ差交わして先頭ゴール。8度目のGⅠ挑戦でようやく栄冠の獲得に成功する。

自身にとっても初となるJRAのGⅠ制覇に「子供の頃から日本でGⅠを勝つのが夢だった。特別な気持ち。言葉が出てこない」と感激するモレイラ騎手。これでこの日は5勝目、第9レースではJRA通算100勝も達成している。“マジックマン”と称される卓越した手腕で勝ちまくり、仕上げとばかりに惜敗続きだったリスグラシューに悲願のビッグタイトルをもたらしたのであった。

（谷川 善久）