新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、“無観客競馬”での開催。中京の芝は重馬場、中山は降雪のため第3レース以降中止と、高松宮記念（GⅠ）は、どこか波乱の予兆を感じさせてのスタートとなった。

ハナを切ったのは9番人気モズスーパーフレア。昨秋のスプリンターズSで逃げて2着に粘っており、この日も「スタートだけは大切に行こうと思っていた」という鞍上・松若風馬騎手とともに飛び出してペースを作る。好位には3年前の勝ち馬セイウンコウセイや初の1200メートル戦に挑むスワンS勝ち馬ダイアトニック。オーシャンS快勝のダノンスマッシュがジワリと押し上げ、スプリンターズSに続くGⅠ連覇を目指すタワーオブロンドンは中団、阪神Cを圧勝した桜花賞馬グランアレグリアやフェブラリーSを豪快に差し切ったモズアスコットは後方に構えた。

やがて直線。懸命に逃げ切りを図るモズスーパーフレアに襲い掛かるのは、15番人気の伏兵、1勝馬のクリノガウディーだ。その間をダイアトニックが突き、後方馬群からはただ1頭、グランアレグリアだけが猛然と脚を伸ばしてくる。最後は4頭が横一線でのゴール。写真判定と長い審議の末に、1位入線のクリノガウディーは4着に降着、モズスーパーフレアが繰り上がりで優勝、GⅠ初制覇という結果となったのだった。

自身にとっても初となるGⅠタイトルを意外な形でつかんだ松若騎手は、だが「素直に嬉しい」と語る。抜群のスタートダッシュと「自分のリズムで走れた」という道中だけでなく「直線は必死、無我夢中で追った」と、最後まで諦めない騎乗がもたらした栄冠といえるだろう。

（谷川　善久）