良馬場に16頭のスピード自慢が集ったスプリンターズS（GⅠ）。ゴール前の大接戦を制して初のGⅠタイトルを手にしたのは、ルガルだ。

葵Sと北九州記念を逃げ切った3歳牝馬ピューロマジックがハナを切り、アイビスサマーダッシュ2着のウイングレイテスト、ルガル、香港のG1馬ビクターザウィナーらが追う展開。連覇を目指すママコチャと高松宮記念勝ち馬マッドクール、セントウルSを差し切ったトウシンマカオが続き、一昨年2着のウインマーベル、サマースプリントシリーズの覇者サトノレーヴらは中団、悲願のGⅠ獲りに燃えるナムラクレア、もう1頭の香港馬ムゲンなどは後方に構えた。

ピューロマジックが4馬身から5馬身のリードを保って4コーナーを回り切ったものの、600メートル通過32秒1の高速ラップは直線での大逆転劇を予感させるものだった。

やはり、猛然と前に迫る後続各馬。中でも力強い伸びを見せたのがルガルだ。今年1月のシルクロードSを快勝するも高松宮記念は1番人気で10着。さらに骨折が判明し、ここは半年ぶりの実戦となったルガル。9番人気まで評価を落としていたが、これが本来の力だとアピールするかのように芝を蹴り上げる。そして直線半ばで先頭に立つと、馬群を捌いてきたトウシンマカオ、ママコチャ、ウインマーベル、大外を追い込むナムラクレアらの追撃をなんとかクビ差しのぎ切っての先頭ゴールでGⅠ初制覇を果たしたのである。

「レースはあまり覚えていない。後ろの馬がこんなに迫っていたことも、まったくわからなかった」と、デビュー7年目、こちらも初のGⅠ勝利となった西村淳也騎手。無心の手綱、無我夢中のステッキでつかんだビッグタイトルといえそうだ。

（谷川　善久）