日ごと満開へと近づく桜の下、桜花賞（GⅠ）には精鋭18頭が集った。前年の2歳女王ダノンファンタジーはチューリップ賞を、その好敵手クロノジェネシスはクイーンCを、いずれも完勝しての参戦。他の前哨戦からもノーワン、プールヴィル、エールヴォア、アクアミラビリス、ルガールカルムといった顔ぶれが駒を進めてきた。この路線で上位争いを続けているビーチサンバ、シェーングランツ、ジュランビルらも健在だ。

そんな中、約4か月ぶりの出走となったのがグランアレグリア。デビュー戦でダノンファンタジーを突き放し、サウジアラビアロイヤルCも完勝、朝日杯フューチュリティSでは牡馬相手に3着と健闘した素質馬とはいえ、鞍上のクリストフ・ルメール騎手も久々の実戦に不安を覚えていたという。

だがグランアレグリアは、スタートからゴールまで完璧なレースを披露する。

プールヴィルがハナを切ると、グランアレグリアも好スタートから先行、4番手でリラックスしながらの追走となる。そのまま淡々と流れるかに思えたが、レースは3コーナー過ぎから4コーナーにかけて早くも動く。ペースが遅くなったと見るや、グランアレグリアは大外から前に並びかけていき、堂々先頭に立って最後の直線へと向かったのだ。

「朝日杯では速い脚を使えなかったので、今日は4コーナーで動いた。そこからの加速は素晴らしく、いいスピードを維持することができた」

そう語るルメール騎手の言葉通り、グランアレグリアの走りは圧巻のひとこと。一完歩ずつ後続との差を広げ、追いすがるダノンファンタジー、外から差を詰めるクロノジェネシスとビーチサンバ、馬群を縫って追い込むシゲルピンクダイヤらの2着争いを2馬身半後方に従えて悠々の先頭ゴールを果たしたのである。

勝ちタイム1分32秒7はレースレコード。年明け初戦での桜花賞制覇は史上初。速さの限界も常識も打ち破って、グランアレグリアは桜の女王となったのだった。

（谷川　善久）