マイルチャンピオンシップ（GⅠ）は、出走16頭全てが重賞ウィナー、うち10頭にマイル重賞の勝ち鞍があるという好メンバーによって争われた。

芝・ダートを問わない速力を持つバスラットレオンの先導で進んだレース。連覇を狙うセリフォスは先団の外を確保し、4連勝で毎日王冠を制した3歳馬エルトンバローズはその後ろ。京成杯オータムハンデを勝ったソウルラッシュ、エプソムCで豪快な追い込みを決めたジャスティンカフェは中団に構え、昨年2着のダノンザキッド、紅一点のナミュール、この路線の安定勢力で1番人気に推されたシュネルマイスターは集団後方を追走する。

ペースは落ちぬまま、勝負は直線へ。外からセリフォス、内からソウルラッシュ、両馬の間からジャスティンカフェが抜け出してくる。そこへ追い込んできたのがナミュールだ。

「スタートのタイミングが合わなかったので、気持ちを切り替えて馬がリラックスして走れるよう心がけた」という藤岡康太騎手とともに最後方で4コーナーを回ったナミュールは、いざラストスパート。「追い出してからは凄くいい反応。コース取りさえ間違えなければ突き抜けてくれるはず」との感触通り、前をこじ開けるように鋭く伸びて、最後はソウルラッシュとジャスティンカフェの追い比べを鮮やかに交わし去る。

昨年はオークス3着、秋華賞2着、今春はヴィクトリアマイル7着など、大舞台で涙を流し続けたナミュール。だが前走・富士Sでチューリップ賞以来となる勝利をマークすると、その際に見せた鋭い末脚をここでも披露、8度目のGⅠ挑戦で悲願を達成した。負傷したライアン・ムーア騎手に代わって急遽の手綱となった藤岡騎手は、ジョーカプチーノでつかんだ2009年のNHKマイルC以来のGⅠ制覇だ。

長らくビッグタイトルを望み続けた人馬が、その想いをターフに叩きつけるかのような、強烈な直線一気であった。

（谷川　善久）