人気上位6頭が単勝オッズ10倍以下、混戦模様となった阪神ジュベナイルフィリーズ（GⅠ）。ライバルたちをねじ伏せて2歳女王の座を手にしたのは、アスコリピチェーノだ。

フェニックス賞勝ち馬シカゴスティング、もみじS逃げ切りのナナオ、ファンタジーSを制したカルチャーデイらが先団を形成し、1000メートル通過58秒2という緩みのないペースが作られる。有力馬はこれら先行勢の後ろから中団にかけてひしめき合う。京王杯2歳Sの覇者コラソンビート、アスター賞圧勝のキャットファイト、赤松賞1着馬ステレンボッシュ、アルテミスS2着のサフィラ、萩Sを勝ったルシフェルといった面々だ。

この集団の中にアスコリピチェーノも構えている。6月の新馬戦を鋭く差し切り、新潟2歳Sでも鮮やかに弾けて重賞制覇。以来3か月半ぶりの実戦となったが「いいコンディションで自信を持って乗れた。リズムよく走らせることを重視した」と振り返る鞍上・北村宏司騎手とともに、中団外の位置からアスコリピチェーノは直線へと向かった。

懸命に逃げ粘るシカゴスティングだったが、後続との差が少しずつ縮まっていく。とりわけ目を引いたのは、馬体を合わせて末脚を伸ばすアスコリピチェーノとコラソンビートの勢いだ。この争いはほどなくアスコリピチェーノが制したものの、続いてステレンボッシュが内へと切り替えて追い込んでくる。

だが「最後まで伸び続けてくれた」と北村騎手が語った通り、アスコリピチェーノの脚色は衰えない。最後はステレンボッシュをクビ差封じ込めると、1分32秒6のレースレコードを叩き出して先頭ゴールを果たすのである。

これでデビュー3連勝。昨年のリバティアイランドに続いて、今年もまた将来が楽しみになる女王誕生の瞬間であった。

（谷川　善久）