フェブラリーS（GⅠ）は、早くも春を思わせる柔らかな陽光の下で開催された。昨年このレースを逃げ切ったインティが単勝オッズ3.0倍の支持を集めたが、そこへ立ちふさがったのは一昨年の安田記念勝ち馬モズアスコット。初めてダートに挑んだ前走・根岸Sで“スタートでは最後方。そこから差し切り勝ち”という豪快なパフォーマンスを披露し、ここでは単勝オッズ2.8倍の1番人気に推されたのだ。

そして両馬の明暗は、クッキリと分かれることになる。

ペースを作ったのは、昨年のユニコーンS勝ち馬ワイドファラオとマイルチャンピオンシップ南部杯2着のアルクトス。1000メートル通過58秒7という緩みのないラップの中、連覇を狙うインティは4番手。東海S2着のヴェンジェンスが続き、一昨年の覇者ノンコノユメ、南部杯1着のサンライズノヴァ、武蔵野Sを制したワンダーリーデルは後方に構えた。

モズアスコットは好位勢の直後。前走とは一転して上々のスタートを切ると、インティを前に見る絶好のポジションへと導かれていた。しかも鞍上のクリストフ・ルメール騎手いわく、「前走は80%、今回はトップコンディション」と仕上がりにも満足感を抱いての追走。やがて直線、その自信は「いい脚で加速してくれた」という差し脚につながる。

伸びあぐねるインティ（14着）をあっさりとかわしたモズアスコットは、好位から先頭に並びかけようとするタイムフライヤーも楽々と捕らえ、さらに突き放す。JBCクラシックなどの勝ち鞍を持つケイティブレイブ、あるいはサンライズノヴァやワンダーリーデルの追い込みを2馬身半振り切って、悠々の先頭ゴールだ。

芝・ダート双方でのGⅠ制覇は、クロフネ、アグネスデジタル、イーグルカフェ、アドマイヤドンに続き、JRA史上5頭目の快挙。2020年最初の大一番は“二刀流の王者”誕生に沸いたのだった。

（谷川　善久）