有馬記念（GⅠ）では、クロノジェネシスが連覇を目指してラストランに臨んだ。だが、春に皐月賞を、秋には天皇賞（秋）を制した3歳馬エフフォーリアが、ファン投票1位の座も1番人気も奪い取る。鞍上・横山武史騎手によれば「天皇賞の出来には及ばない。初めての2500メートルで折り合いも不安だった」とのこと。それでも「能力は高い。8割、9割の力を出してくれれば十分だ」と、絶大な自信とともにグランプリへと挑む。

そしてエフフォーリアは、勝利もつかみ取るのである。

逃げて連勝中のパンサラッサが、ここでもハナを切る。菊花賞馬タイトルホルダーは離れた2番手、フランスでフォワ賞を勝ったディープボンドは先行馬群に位置し、その直後にクロノジェネシス、これを見る形でエフフォーリア、さらに三冠レースで常に上位を争ったステラヴェローチェらが続き、エリザベス女王杯1着のアカイイトは後方を進む。

厳しい流れの中で、横山武史騎手は好感触を手綱伝いに得ていた。「余計なファイトをすることなくリラックスしている」。3コーナーから4コーナー、無理なく馬群の外を上がっていくのも余裕の証か。前を射程圏に捉えて、エフフォーリアは直線へと向かう。

満を持して先頭に立ったタイトルホルダーを、エフフォーリアとディープボンドが競り負かしに行く。外からはクロノジェネシスとステラヴェローチェも急追。この争いを力で制し、エフフォーリアは4分の3馬身抜け出して先頭ゴールを果たすのだった。

「また1つ積み重ねられてよかった」と横山武史騎手。万全とは言えない状況でも難敵を下したレースぶりを見れば、まだまだタイトルを積み重ねていくことも期待できそうだ。

クロノジェネシスに加え、コントレイル、そしてグランアレグリアと、一時代を築いたスターホースたちが相次いで引退の時を迎えたが、エフフォーリアという新たな太陽が、今後のターフを照らしてくれるはずである。

（谷川　善久）